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少しして落ち着きを取り戻したソーヤは、ゆっくりと今の自分の状況を確認してみた。ガッチリと静佳の肩に腕を回してしがみついている自分がいる。
「・・・・」
顔を上げて微動だにしない静佳を見て、
「す、すいません////」
顔を真っ赤にして静佳から離れた。
(わ、私・・・な、なんてことを・・・!)
ソーヤは目を閉じて、今、自分がしていたことを思い出した。さっき、静佳の身体に寄り掛かったのは車内が混んでいて押されたことによる単なる偶然であった。しかし、今度は自らの意志で静佳にしがみついてしまった。それも寄り掛かるとかではなく、抱きつくような姿勢でだ。
大勢の人目があるというのに、自分のあまりにも大胆な行動に恥ずかしくなって、さっきより小さくなってしまった。
「大丈夫か?」
「え?」
凄く恥ずかしくて俯いていたソーヤに静佳が声をかけてきた。
「すいません・・・。急に抱きついたりして」
「いや、いいんだ」
本当はちっとも良くない。ソーヤ以上に静佳の方が心臓がどうにかなりそうだった。少しでも今の気分を落ち着ける為に、他のことで気を紛らわしたく、どうしてソーヤが急に叫び声をあげて、自分にしがみついてきたのか、その理由を聞こうとする。
「急に抱きついてきて。何かあったのか」
「・・・・」
ソーヤは少しも動じることなく自分のことを心配してくれる静佳をポーっと見つめてしまった。普通だったら、何かしらの反応があってもいいはずだ。なのに、静佳はソーヤのことを心配してくれてた。それが、あまりにも嬉しくて、嬉しくて、ソーヤの思考が一時的に止まってしまった。
「ソーヤ?大丈夫か?」
「・・・は!は、はい!大丈夫であります!」
緊張のあまりソーヤは声が裏返り静佳に対し敬礼をしてしまった。
「いや、大丈夫そうには見えないが」
「ほ、本当に大丈夫です!ちょっと、今、フロントガラスに女の幽霊が見えただけで・・・」
「幽霊?」
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