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「・・・・」
ソーヤの隣に座っている夢葉のインカムから車内で、どのような会話が交わされているのか、明日香には筒抜けだった。
様々な偶然が重なりもたらしたラブ的な会話と展開であったが、今の明日香は素直に喜ぶことができずにいた。
明日香は今、非常に機嫌が悪い。確かに、車内にいれば静佳に気付かれてしまうが。それを警戒して、静佳に見つからない場所で待機することになったのだが、
「ゆ・め・は・ちゃ~ん。あとで、覚えておきなさいよ」
明日香は“特等席”に座り不気味な笑みを浮かべていた。静佳のデートが終わったあと、自分をこんな目に遭わせた夢葉にどんな仕返しをしてやろうか企んでいた。
明日香が怒っているのも仕方ないことだ。彼女はさっきから、ずっと、この場で待機していたのだから。バスの屋根にしがみつき時速数十キロは出しているバスに耐えていた。バイパスだからもっと早い速度が出ているかもしれないが、そこはあまり考えなかった。考えるとしがみついている力が抜けそうになるから。
風のせいで口を開くこともままならない。トンネルと看板に注意しながら明日香は、これから模歌水族館に到着するまで、この姿勢のままで耐えないといけなかった。
----一時間ほど。
明日香が夢葉に対する文句を漏らしながすも、静佳とソーヤの初デートは、まだ始まったばかりであった。
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