その2

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「・・・それで、ツジリーとソーヤの今後のプランはどうなっているの?」  これ以上、夢葉を責めたところで何も解決しないし、過ぎてしまったことだ。仕返しはあとですればいい。元々は自分も静佳とソーヤのデートが上手くいくのか気になって協力をしにきた。 「あ、はい。さっき、兄様は隣の客からウォーターショーのチケットを頂きました。今の時間を考えると、午後からのウォーターショーを見ることになると思いますから、午前中は二階の水槽ペースを。それから、レストランでお食事。ショーのあとは、屋上でウミネコへのエサやりってころです」  静佳が模歌水族館のウォーターショーのチケットを貰ったのは嬉しい誤算であった。あそこのウォーターショーは、人魚姫をモデルとした劇仕立てで王子との恋愛模様が繰り広げられる。夢葉が通う夕海中学校でも、その完成度の評価は女子の間でも有名であった。まさに、今回のデートの雰囲気を盛り上げるには、打ってつけのイベントであった。 「私達の目標はソーヤさんと兄様を親しくさせて、対人過敏症を克服させることです!まずは、兄様が余計な反応をしないように出来る限り人に触れさせないようにすること!修学旅行の悲劇は繰り返させません!」  一年の時に静佳が起こした騒動は夢葉の耳にも届いていた。静佳のおかなしな症状とはいえ、深刻だとその時から思うようになった。水族館など危険は多いが、自分達がサポートすればどうにかなる。そして、少しずつ静佳を人に慣れさせ対人過敏症を改善させるのだ。  夢葉とは反対に、先にバスを降りた保美と亜華火は垣根を背にして模歌水族館へ一緒に行く静佳とソーヤを監視してた。双眼鏡を使っての監視は怪しまれるので、取材用にもってきたデジタルカメラを使ってであるが。カメラのズーム機能を生かせば、歩く二人の後ろ姿をしっかりと見ることはできる。 「ソーヤ、ダメね。せっかく、水族館についたのに静佳さんと離れて歩いているようじゃ」
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