その1

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「ところで、夢葉ちゃん。一つ、気になっていたんだけど」 「なんですか?」 「これから、ツジリーと私達、同じバスで模歌水族館を目指すことになるのよね」 「そうなりますね。私は離れた場所から二人の様子を伺いますが」 「・・・一緒に乗ったらバレない?」  逢魔の狭間にいる者の姿は基本灰色に見える。俗に言う、人影という奴だ。人影を静佳に目撃されたら、明日香が密かについてきたというのを見破られてしまうのではないか。もし、バレたらせっかくの計画も台無しになってしまう。 「ツジリーに見つからないようにしないといけないけど、何か策があるの?  夢葉はその対策を何か考えているのだろうか。明日香に聞かれると、夢葉は不敵な笑みを浮かべた。 「大丈夫ですから!明日香先輩にはバレない場所でついてきてもらいますから」 「バレない場所?」 「あ、そろそろ、バスが来ます!とりあえず、バス停に向かいましょう!」  夢葉は静佳に気付かれないよう目元をサングラスで隠すとバス停に乗り遅れまいと走り出した。  最近、新装オープンした模歌水族館は連日、多くの人が訪れる。自家用車で訪れる人もいるが、地元や遠方でない人は休日割引が効くバスを利用する人が多い。夕海高校前のバス停には静佳だけでなく何人か一般の客が待っておりバスが到着すると彼らはバスに乗り込んだ。  人の多さも夢葉達にとっては都合が良かった。人混みに紛れて静佳とソーヤのサポートができるから。  人混みで溢れるバスに乗車した静佳とソーヤ。二人は挨拶もそこそこに、人混みに揉まれ押される。 「きゃ!」  ソーヤは短い悲鳴を上げて前のめりに倒れそうになる。彼女が倒れそうになった先には、静佳がいた。ソーヤはそのまま、薄手の長袖シャツを着た静佳の胸に寄り掛かった。 「わ、わあああ!ごめんなさい!」  人混みに揉まれたとはいえ、いきなり静佳の胸に寄り掛かってしまいソーヤは顔を赤くして離れようとしするも、後ろから押されて動きようがなかった。 「いや。大丈夫だ」  静佳は呟くように言う。このような状況でも、彼は少しも慌てることなく、いつものようにクールに接してくれた。  緊張し慌てている自分とは大違いだとソーヤは思い、赤い顔を隠すようにして静佳の胸板に顔を押し当てる。
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