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「え、ええ・・・。模歌水族館に間違いありません」
「ありがとうございます。ところで、失礼ですが、デートですか?隣の彼女と」
亜華火はさり気なく、静佳にデートの意識を保たせるように彼の隣で緊張のあまり、石のように固まっているソーヤをチラリと見て訪ねる。
「そうです。彼女とデートです」
「そうでしたか、すいません。邪魔してしまったようで。あの、お詫びといったら何ですが」
亜華火はさり気なくポケットから模歌水族館で行われている、ウォーターショーのチケットを静佳に差し出す。
「これ、あそこのウォーターショーのチケットです」
「いいんですか?」
「構いません。新聞のおまけで貰ったチケットですから」
苦しい言い訳だったかもしれない。本当はソーヤの初デートに備えて事前に用意していたチケットである。今はインターネットという便利な機械があるので、事前にチケットを入手することなど簡単だった。模歌水族館のウォーターショーはカップルで見るのにはベストな場所だと言われていた。デートの雰囲気を盛り上げる為には、少々の細工は必要なのだ。
静佳は緊張しきったまま亜華火からチケットを受け取ると、それを財布にしまった。
「亜華火さん。うまくいきましたか?」
「もちろんよ。保美」
亜華火は静佳に悟られないよう小声で隣に座っている保美にウィンクした。
「これで、第一段階は成功ですね」
「ええ。あとは、ソーヤ、次第だけど」
静佳と密着するかしないか。そのギリギリの距離を保っているソーヤは緊張が続いていた。
(ああ・・・!どうしよう!まさか、静佳さんとこんなに密着できるなんて!)
少し左を向けば静佳の顔がそこにある。あんなにも憧れたいた先輩と一緒。しかも、これで終わりではないデートはまだ始まったばかり。こんな幸せなことがあるだろうか。身体は緊張で固まっているけど、心は今にもとろけそうなくらい幸せだった。
「ねぇ。お姉さん」
「は、ハヒィ!」
ソーヤは隣に座っていた少女に声をかけられ、思わず変な声で返事をしてしまった。
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