episode1 紫煙の向こう

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「お前が34で独身とはね。意外だわ。 色気づいた中坊だったくせに」 「…忘れてください」 健さんが店に来たのは、俺が中学生の頃。 初めて彼女が出来たのも中学だった…忘れてくれよ、本気で。 …かれこれ20年も付き合いがあるのか。 そりゃ俺も年取るわけだ。 そりゃ甥っ子が高校生になって、彼女を家に連れて来てるわけだ。 「お前、昔の女に未練あんだろ」 …昔の女、ね。 せめてきちんと付き合ってたらもうチョイ事情が違うのに。 「自分から動きゃいいんでねーの?」 「…そーも行かないんすよ」 ため息が漏れる。 「歳が、離れてく気がするんですよね」 「なんだそりゃ」
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