episode1 紫煙の向こう

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「こう、20そこそこの頃の5年と、30過ぎてからの5年って、なんかちがうじゃないですか」 そう、20やそこらの5年は、大差ない気がする。 だけど30過ぎてからの5年は、確実に歳をとっていくような気がする。 身体の違いがあるのかもしれない。 責任のある仕事が増えるせいもあるかもしれない。 翠だってもう、今年で23になってるはず。 ちゃんと大人になってるはず。 そう思うのに、記憶の中の翠が17歳で止まってるせいか、俺だけ歳をとっているような気がしていた。 12歳だったはずの歳の差は、もう20歳も離れているような、そんな錯覚を覚えていた。 「その感覚はまぁ、判かるっちゃわかるが。 ま、40過ぎっとまた一気に老けるぜ?」 30代なんてまだまだ若いと、笑った健さんは俺を見てにやりと笑う。 「お前、生徒に手だしたな?」
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