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しとしとと静かに雨が降る寒い夜。
翠と初めて会ったのも…こんな雨の日の夜だった。
最近は、ベランダでぼんやり紫煙をくゆらす事が多くなっていた。
一ヶ月で一箱無くなるか無くならないか、その程度のペースで減る煙草。
煙草を吸うというより、煙草が炭化していくのを眺めているのが正しいかもしれない。
意識しなければいつまでも深みにはまる思考に、煙草が燃え尽きる時間で区切りを付けているだけ。
最近、ほんと…駄目だ。
もうすぐ翠が卒業して5年になるのに。
それなのに、こんなにも…昨日のことのように思い出す。
毎日相手をする高校二年生頃の生徒達は、当たり前だけど記憶の中の翠と同い年の17歳だし。
毎年同じことを繰り返す学校行事は、否応無く、翠と過ごした時間を思い出させる。
雨の降る夜には翠の怯えた瞳を思い出す。
思い出すたびに…今も泣いていないか心配になる。
あの子は、1人で溜め込みがちだったから。
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