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「…あんた、ずいぶん彼女居ないでしょ」
ため息混じりに俺の前に筑前煮の皿を置いたのは、姉の渚。
「十四代」
応えずに酒の催促をすると、諦めた表情でグラスを置く。
「まぁ、あんたは1人で大抵の事できるし
好きでもない相手と一緒に居れるタイプでもないから
結婚はしなきゃしなくてもいいのかもしれないけど」
そう思ってんなら、なんも言わずにほっといてくれよ。
「あたしはそう思ってんのよ。
で、これは隣のおばちゃんから、あんたにどーお?って」
カウンター越しに渡されたのは、茶封筒。
子供の頃から付き合いのある隣の家のおばさんは、この手の話はとりあえず俺に回すらしい。
一度も会ったことないんだからいい加減、俺んとこもって来るのやめてくれないかな、ともう数年前から思っている。
「…いらね」
「だと思った。顔だけ見てみたら?」
「いいよ。会う気も無いし。適当に断っておいて」
「はいはい。じゃ、さっさと可愛い彼女作んなさいよ」
何度も交わしたのと全く同じような会話をして、渚に封筒を突き返す。
可愛い彼女、ね。
…出来たら、苦労してないっつうの。
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