episode1 紫煙の向こう

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----- 「…あんた、ずいぶん彼女居ないでしょ」 ため息混じりに俺の前に筑前煮の皿を置いたのは、姉の渚。 「十四代」 応えずに酒の催促をすると、諦めた表情でグラスを置く。 「まぁ、あんたは1人で大抵の事できるし 好きでもない相手と一緒に居れるタイプでもないから 結婚はしなきゃしなくてもいいのかもしれないけど」 そう思ってんなら、なんも言わずにほっといてくれよ。 「あたしはそう思ってんのよ。 で、これは隣のおばちゃんから、あんたにどーお?って」 カウンター越しに渡されたのは、茶封筒。 子供の頃から付き合いのある隣の家のおばさんは、この手の話はとりあえず俺に回すらしい。 一度も会ったことないんだからいい加減、俺んとこもって来るのやめてくれないかな、ともう数年前から思っている。 「…いらね」 「だと思った。顔だけ見てみたら?」 「いいよ。会う気も無いし。適当に断っておいて」 「はいはい。じゃ、さっさと可愛い彼女作んなさいよ」 何度も交わしたのと全く同じような会話をして、渚に封筒を突き返す。 可愛い彼女、ね。 …出来たら、苦労してないっつうの。
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