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「渚、俺にも十四代」
俺の傍らの椅子を引きながら言ったのは健介さん。
健さんは、俺のバイトの先輩で、俺に酒の味を教えた人で、お互いに腹を割って話が出来る相手で、…渚の旦那。
まぁつまるところ義兄だけど実の兄のようなそんな存在。
あなたも飲むの?と呆れたように息をついて渚は健さんにもグラスを手渡した。
「あたし上がるから、あと片付けしてきてね」
そういって、渚は店の裏口から出て行った。
「一生独身で行くのか?」
「どーっすかねー…」
そんな大層な決心をして生きているわけではない。
単純に、一緒に居たいと思う相手がいない。
誰かと付き合うたびに、今度は本気になれたらいいと思っていたけれど、記憶の中の少女がいつも邪魔をした。
結局、かれこれ一年くらい彼女は居ない。
「別にお前、顔悪くないからモテんだろ」
「べつにそーでも…。もういい歳だし」
「あぁ、性格が悪いからか」
そんな事をハハッと笑って言ってくれる。
…んなこた自分でも判ってますよ。
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