始まりの男

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 『君、上手だね!私にも教えてよ』  初めて女の子に声を掛けられ、少年は舞い上がった。  事実、少年は器用だった。  少年はここぞとばかり、張り切って教えた。  自分の指示に素直に従う少女、そんな姿が嬉しくて、時折、冗談を交えつつ、少年は熱心に教えた。  少年の些細な冗談にも、実に楽し気に少女は笑った。  そんなほがらかな少女に、好意を持った。  これが少年の初恋だった。  少女はナイフを完成させると少年に礼を言う。 『ありがとう!君のお蔭ですごく良いのができたよ!』  輝かんばかりの笑顔でそう言い、少女は駆けて行った、同じキャンプに参加していた、サッカー少年の元へ。  懐かしく、少しほろ苦い思い出だ。  男は石の加工に取り掛かる、石器と言っても色々有るが素材が黒曜石なら打製石器だろう。  石に衝撃を与えて割り加工する方法だ。  手頃な大きさの石を手に持ち打ち付ける  河原に乾いた音が響く。  石を打ちながら男は考えた、此処はドコで、何故こうなったのか?  ここがドコなのかについては、結局解らなかった。  余りにも情報が少な過ぎた。  では、何故こうなったのか。  友達の悪戯かとも思ったが、人並みの付き合いは有るが、彼にはそれ程親しい友達は居ない。  会社の同僚の悪戯も有り得ない。  仕事以外の付き合いに誘われた事など皆無だったし、飲み会に声を掛けられた事すらない。  親兄弟は真っ先に否定した。  親は弟を溺愛していて、男の事はほぼ無視していた、まともな会話をした記憶も乏しい。  弟は小さな頃から、男の事を毛嫌いしていた、謂れの無い敵意だった。  恋人なんていない、いた事すら無い。  そこ迄考えて、自身の対人関係にドン底まで凹む。 「俺って・・俺の人生って・・・」  どこまでも落ち込みそうだった。 「止め止め!首括りとぉ成るわ、あかんあかん!、俺ぁまだ死なんでぇ!死んでたまるか!、まだ一回も結婚しとらんのに!」  まず恋人だと思うが、兎に角 気持ちをサルベージする。
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