始まりの男

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「先ずは藁っぽい草と蔓(かずら)・・・木の枝も欲しいな」  そう言いつつ山に分け入り、直ぐに尖った石を踏み絶叫する。 「痛っ!!糞っ垂れがぁ!!」  無意味と知りつつ何かを罵る、しかし、下ばかり見ている訳にもいかず、辺りをキョロキョロと見回しながら歩く。  生えている木々はどれも大きく、幹は直径5mは有りそうで、高さは100mは優に有りそうだ。  日本にこんな場所が有ったのかと驚きつつ見渡せば、森全体は日の光が届き難いのか昼なお暗い。  木々のその大きさに暫し圧倒される。  だが食糧は無いかと期待して見渡したが、主に針葉樹ばかりで食べられそうな木の実などは見当たら無かったそうして、上ばかり見ながら歩いていると、当然の様に木の枝に蹴躓きスッ転がり、また吠える。 「うおわぁ!なんなんやぁ!糞ぉ!」  躓いた木の枝を手に取り、放り投げようと振り被るが、ふとその枝の持ち易さに気付く。 「あ、使えるやん、コレ」  案外、冷静な所も有る様だ。  他にも何か無いかと周囲を見るが、そう都合よくはいかず、コレといって使えそうな物は見つからなかった。  草は割と簡単に克つ大量に見つけられ男は胸を撫で降ろした、最悪見つからない可能性も考えていたから。  しかし、その分何度も山に入らなければ成らなかった、そして、其の度に男の絶叫が山々に木霊する事になった。  こうして、鈍臭い事に不必要なまでに痛い思いをして、当たり前だが改めて靴の必要性を再認識した。  草を集め終え草鞋を作ろうと座った時、男の腹が鳴った。  そう言えば、起きてからかなり時間が経っている。  石器作りや素材集めに時間を取られ、何も口にしていなかった。 「腹ぁ・・減ったなぁ」  眉を八の字にして情けない声で呟き辺りを見回す、先程森に入った時には、食べられそうな物は何も見当たら無かった、となると。 「川かぁ・・魚おるかなぁ」  立ち上がり、川に向かって歩き出す、足の痛みに顔をしかめ草鞋を先に作ろうか、とも思ったが、空腹には勝てず、躊躇いつつ川に入った、その瞬間。  転んだ。  苔に足を取られてバランスを崩し、派手に水飛沫を上げ呻く。 「痛ったぁ~!」  苔に手古摺りつつ、何とか立ち上がる、少し恥ずかしい。  ヨロヨロとしたその様は、まるで産まれ立ての小鹿の様だ。  及び腰でバランスを取りながら川面を覗く、小魚が殆どだが、そこそこの大きさの奴も居る。
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