始まりの男

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 色々と考えた末に、舞錐(まいぎり)式と呼ばれる方法にした。  弓の弦に、棒の端を巻き付け、弓を上下させ、棒を回転させ火を熾す方法だ。  昔の事が思い出される。 あのキャンプの最後の夜のキャンプファイア、あの子の隣に居たのは、自分では無かった、諦めと共に泣きそうな気持で眺めていた。  サッカー少年や少女が悪い訳では無い、彼らには悪気は無かったし意地悪された訳でもない相手にもされて無かったが。  彼と自分何が違ったのか?やはり容姿だろうと思う、よく言われる《人は見た目じゃ無い》と言う言葉は彼には何の慰めにもならなかった。  因みに、その頃、両親と弟は海外旅行に行っていた。  腹立ちと共に思い出す。  そうして、色々思い出している内に、道具が出来上がった。  火を熾すのはやはり簡単にはいかなかった。  ここ数年、インドアな生活をしていたせいか、コツを思い出すのに少し手古摺った。  何とか火を熾し、あらかじめ用意しておいた串に魚を刺し、火のそばに串を立てて魚を焼き始める。  焼ける迄の間ただ待っているのも時間が勿体無いので、縄を綯(な)う事にした、縄を拵えつつ、これからについて考える。  先ず人を見つけ、現在地がドコなのか知らなければならない。 そして電話を借りて、会社に事情を説明し、今日明日の有給を申請しなければならない。  こんな出来事、どこまで信じて貰えるだろうか。  自分ならこんな話聞けば鼻で笑うだろう、どうせ嘘を吐くならもっと上手い嘘を考えろと、そう考えると暗澹たる気分になる。 「警察にも届けた方がええんかな、せやけどコレ何の犯罪になるんや?・・誘拐?・・ないわービンボな派遣工さろぉても一文にもならんわ」  家への連絡も考えたが、家族の性格を思い出し止めた。  どうせあいつ等の事だ、恐らく保険金以外興味も関心も無いだろう、保険には入って無いが。  男にとって家族は最早他人より遠い存在になっていた。  考えている内に魚が焼き上がり、良い匂いが漂い始めた。  縄を綯う手を止め、魚を頬張るが、一口食べ眉をしかめた。
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