一章 偽の平和と盗賊達の宴

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「素直に捕まりなさい。さもないと…。」 「さもないと?」 怒りに満ちた少女の声に、しかし青年は全く動じない。 それがとどめとなったのか、少女は素早く剣を抜き放つ。 「力ずくで捕まえるっ!!」 力強く吼えた少女に、傍観していた野次馬が騒ぎ出す。 やれやれー!囃し立てる者。 危ないじゃないか!叱責を飛ばす者。 様々な声が飛び交って、とても収拾が付きそうにない。 その状況に青年は頭を抱えていたが、少女はお構い無しといった具合に臨戦態勢を解かない。 やがて青年は、大きな溜め息を吐いた後、少女に問い掛けた。 「お前、返り討ちになるとかは考えないのか?」 ピキッ…。 何かが折れるような音が鳴った気がする。 青年がそう思った瞬間。 「だ、か、ら…お前呼ばわりするなぁぁっ!!」 少女は声と力一杯に地を蹴って青年に向けて飛ぶ。 そして振りかぶった剣を渾身の力で青年目掛け振り下ろした。
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