一章 偽の平和と盗賊達の宴

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ガキンッ。 地面に剣先が当たり、鈍い音が鳴った。 青年はそれを紙一重で回避していたのだ。 後ろに飛び退いた勢いでフードから青年の素顔が覗いた。 その瞬間、セレスと、辺りの野次馬達とが一斉に、 「な…!?」 驚きの声を漏らし、動きを止めた。 それは青年の素顔が、あまりにも目を引くものだったからである。 まるで空のように蒼い髪と、宝石のターコイズを思わせる鮮やかな瞳。 誰もが目を見張る風体に、その場の全員が思わず見惚れてしまった。 「…よく分かった。なら、こうしよう。」 青年が言って、セレスはハッと我に返る。 解けかけていた構えを素早く直すと、青年の動きを待つ。 「お前が勝ったら盗賊でも何でも好きなように扱え。だが。」 青年は言葉を句切り、マントの中に手を入れた。 そしてすぐ、マントの中からそれが姿を現す。 青年の手には、セレスの持つそれよりも幾らかは短いが、剣が握られていた。
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