一章 偽の平和と盗賊達の宴

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お母さん、ごめん…!! 心の中で呟いて、セレスはぐっと目を閉じた。 がすっ。 しかし、身体に走ったものは斬撃による痛みではなく、鈍い衝撃だった。 予想外のそれに驚いてセレスが瞼を開くと、青年が剣の柄の部分で殴ってきたのが解った。 「痛っ!?」 どしん、とその場で尻餅を付いたセレス。 殴られた場所は大して痛まなかったが、地面にぶつけた尻が地味に痛い。 セレスが顔を上げると、青年は酷く呆れた表情で見下ろしていた。 「俺の勝ちで良いよな?」 青年はにっこりと笑いながらセレスに尋ねた。 しかしその声色は威圧感に満ちている。 セレスが弱々しく頷くと、青年は安堵したかのようにふぅ、と息を吐く。 完敗だ。 セレスは悔しさと、つい先程まで思い描いていた事態を免れた安堵とで、涙が滲んでくる。
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