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初めてみたのは、入学式。
壇上で話す姿だった。
笑顔だったのは覚えているけど、なにを話していたかなんて、もう覚えていない。
特に印象に残ることもなく過ぎた初対面。
それがいつからだったのか。
その姿を、目で追うようになっていったのは。
×××××××××××××××××××××××××××
「悠くん、なに見てるの?」
「一紀。」
話しかけてきたのは、クラスメート。
小柄で、でも気が強い、頭の切れる奴だ。
「ははーん、また、今村さんでしょ。」
「…ちげぇし。」
鋭いし、人を揶揄うのを生きがいにしてるようなやつだから、素直に答えるのを躊躇う。
良いやつではあるんだけど。
「どこがいいんだか、あんなアホそうなやつ。」
「…オレもそう思う。」
吐き出されたのは、本心。
でもそれと同時に、それだけじゃないんだと心の中で反論するオレもいて。
…ほんと、嫌になる。
ーー初めて会話したのは、入学してから数日後。
帰ろうと廊下を歩いてる時に呼び止められた。
「ごめん、ちょっと手伝ってくれないかな?」
大量のプリントを持って困ったように笑うあの人。
それが、最初。
それからプリントを運ぶのを手伝って、帰ろうとした瞬間、あの人がつまづいて紙をぶちまけた。
不本意にも全部拾い集めて、ホチキス留めまでする羽目になった。
なんでオレがってイライラしていたんだけど。
終わった後に、ありがとうって笑ったあの人が。
無邪気すぎて毒気を抜かれて、なにも言えなかった。
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