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それから、事あるごとに呼び止められて、手伝わされて。 最初はめんどくせー、うぜー、ってそればっかりだったのに。 どこで変わっていったのか。 いつもニコニコ笑ってるから、つられて笑うことも増えていって。 言い合いのような軽口も、居心地が良かった。 そうやって過ごしていくうちに、この人のことが好きなんだ、って気づくのに時間はかからなかった。 気付いたところで、どうしようということもないんだけど。 付き合いたいとか、特別になりたいとか、オレも男だしそれなりの欲求はあるけれど。 でも…、 「あれ、平澤くん?」 名前を呼ばれて振り向けば、いま正に考えていた人。 「いま帰りー?」 「…今日は荷物持ってないんですね、今村先生。」 「オレだっていつも仕事抱えてるわけじゃないよっ」 そう。 相手は、教師で、男で。 なんて不毛な恋。 絶対に言えないし、言えるわけがない。 こんな気持ち消えてしまえって思いながらも。 あなたに会えて、嬉しいオレがいる。
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