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「深く考えるのは苦手で、思い立ったらすぐ行動するから、周りに迷惑をかけてることが多いんだ。」
「…?」
「平澤くんが優しいから、ずっと、甘えてた。…ううん、気付かないようにしてただけなのかも。全部、オレのワガママだったのに。」
なんの話だ…?
「町田くんに怒られた。都合がいいからって平澤くんにばっかり頼むのは止めろって。
そんなつもりなかったのに、そんな風に見えるんだね…。」
ーー待って。
頭が追いつかないけど、嫌な予感がする。
先生が言おうとしてるのは、きっと…
「今まで、頼ってばっかりでごめん。教師のくせに、情けないよね。もう、頼まないようにするから…。」
「ちょっと待って!」
珍しいオレの大声に、先生は目を丸くして固まってる。
やっぱり。
きっと一紀は、オレの為に言ってくれたんだと思う。
悩んでるオレのために。
先生と関わる機会が減れば、もしかしたら、気持ちは薄らぐのかもしれない。
それは、オレが望んだこと。
でも…、
「先生の手伝いが嫌だなんて思ったことないです。」
咄嗟にでた、これが本音。
「これからも、どんどん頼って下さい。
むしろ、もう日課みたいになってるから急になくなったら、寂しいです。」
…ごめん、一紀。
言われた通りだ。
振られでもしない限り、もしかしたら振られたとしても。
この気持ちは、なくならないのかもしれない。
きっと、苦しくて悔しくて情けなくて。
そんな想いをずっと、味わうことになるんだと思う。
だけど…
「…ほんとにいいの?」
「はい。」
「ありがとう…。」
へらり、緩んだ笑顔はもう、いつもの先生の笑顔。
「それに、先生のドジのお守りなんて、申し訳無さすぎて他のやつに任せられません。」
「ちょっ、最後余計!」
この笑顔を、出来れば近くで見ていたい。
だから先生。
好きになって、なんて望みません。
せめて、この学校にいる間、
想うことだけは、許して下さい…。
fin.
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