男、20歳、学生

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十七時まであと五分。 先ほどから何度も時計を確認している。男はパソコンの前から離れられない。カチカチとマウスをクリックする。変わっているはずの無い画面を再び確認する。男は、この作業が無意味であることをわかっていた。しかし、やめられない。 あと五分だった。男は、コーヒーを淹れに席を立った。 十七時まであと二分。男はコーヒーの入ったマグカップを持ち、席に戻ってくる。コーヒーをすすりながら、カチカチとマウスをクリックする。やはり何も変わりは無い。はやる気持ちを抑えながらコーヒーをすする。コーヒーはズズズと音を立てた。 "次回更新まで残り0時間0分52秒" カウントダウンを見つめる。早く……早く…… "次回更新まで残り0時間0分17秒" 早く…早く…早く… "次回更新まで残り0時間0分10秒" じゅう、きゅう、はち… ぜろ! その瞬間に男は更新ボタンを押した。  * * * 4時間ぶりに画面が変わった。男は猛烈な速さで画面を確認していく。そして突然手が止まった。 男はマウスからマグカップに手を移した。 「やっちまった…」 小さくそうつぶやくと、男はひどく意気消沈した模様で投げやりに画面をスクロールしていく。 文字の羅列の中で、撃沈の赤い文字が目立つ。 「このミスはきついな…」 何度も確認したことは、まさしく無意味であった。ミスしていたことに気がついていなかった。4時間もかけて。 その後も男は何度もため息をつきながら、それでもまだ望みある勝利をつかむため、次のコマンドを入力する。 箱庭に入りこめれば良いのに… 男はそう思った。
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