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「かすみーっ!」
部屋に入って声を上げたが反応がない。
部屋の電気もテレビも付いているのに…
中に入ってもいない。
風呂場に回ると、扉は開いていて、その隙間からへたり込む様なかすみの姿が見えた。
「かすみ?」
呼びかけても返事がない。
慌てて駆け寄ると、血飛沫の後、赤く染まったバスタブのお湯。
手首からはお湯をより赤くする血が吹き出ていた。
「かすみ!かすみ!
しっかりしろ!」
肩を揺すっても反応がない。
僕は咄嗟にかかっていたタオルを水で濡らし傷口を上を縛り付けた。
横たわらせ、腕を持ち上げながら携帯で119を押した。
病院では、傷が深く危険な状態だったが、発見が早かったこと、止血の方法が適切だった事で命には問題ないと診断された。
傷の事だけなら、輸血も必要ないし帰っても良いのだが…
単なるリストカットではなく、もはやこれは自殺未遂なので、家に返すのは危険だという事で、医師からはしばらく精神科のカウンセラーを受けて、落ち着くまで入院が必要と言われた。
かすみの母と相談の上、しばらく運ばれたこの病院でかすみを預かってもらう事にした。
かすみ…
もう、無理をするな…
これを機に僕の所へおいで。
そして、僕と笑い合える平凡な毎日を過ごそう。
僕はかすみを一生守り続ける。
そう決意したのだった。
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