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「先生と遥香ちゃんが来てくれたからね」
部屋のドアを小さく叩いて、そう声を掛ける。そして、ドアの外に置かれたトレー──殆んど手の付けられていない、食事の入った食器が載っている──を手にすると、後はお願いしますと階段に向かった。しかし、僕の問い掛けるような視線を受け、
「私には顔を見せてくれないんです」
そう、泣きそうな顔で答えてくれた。そして足早に、階下に下りていく。
僕は、居たたまれない気持ちを誤魔化すように、スマホを手にしたままの三好遥香を促して、ドアをノックした。返事はないが、彼女は気にせずドアノブを回す。
「こうたぁ?」
小さい頃から、そう呼んでいるのだろう。どこか間延びした、甘えたような感じで、そこにいる筈の人物に声を掛けた。そして返事も待たずに、部屋の中へ入っていく。僕も、その後をついて入っていった。
「こうた?」
彼女が再び呼び掛けた先にはベッドがあり、その上でシーツが、白いオバケのように盛り上がっている。その隙間から、こちらを覗く視線を感じ、僕達は更に近付いた。シーツの端を握ると、ゆっくりと隙間を広げる。
そこで僕達は驚愕した。
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