piece2

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悲嘆に暮れる彼女を説得して、僕達は警察に向かった。恐らく、お座なりな対応を受けて、書類を書いて終わりだろう。ただの気休めでしかないが、それでも何もしないよりは、彼女の気持ちも落ち着くのではないか。そう考えたのだ。 ただ、先程の不可思議な現象は、説明の仕様がなかった。いや、もともと僕達の勘違いで、森本航大は窓から抜け出した後だったのかも知れない。 対応に当たった警察官も、そう考えたのだろう。僕が考えていたよりは真摯な態度で接してくれたが、 「そのうち帰ってきますよ」 と、想像通りの台詞が返ってきて終わりだった。僕達はそれに従って、警察署を後にするしかなかった。 「なんなのよ、あの態度! 絶対、私達の話、まともに聞いてないよね! ねぇ、先生?」 道すがら、三好遥香がそう同意を求めてくる。言葉なく、項垂れている森本航大の母親の気を紛らわそうと、変にテンションを上げて話しているのかも知れない。僕と彼の母親の話しか聞かなかった警察官に対して、不満もあるのだろう。しかし、そこまでひどい対応だったとは思えないし、だから、彼女の言葉に同意も出来ない。僕が言葉を選んでいると、彼女は痺れを切らしたのか、 「もういい! おばさん、私がこうたを見つけてくるからね!」 そう、宣言した。
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