piece2

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「ありがとね、遥香ちゃん。大丈夫、きっと帰ってくるから」 彼女の最後の言葉は、自分に向けたものだろう。そして、遥香の言葉を信じていないだろう事も明らかだった。きっと、自分を慰めるだけのものだと思っているのだろう。 しかし僕は、遥香の言葉が上っ面だけではなく、恐らくは今日にでも行動に移すつもりだと感じていた。職業柄だろう。この年頃の無鉄砲さや、無知故の、無茶な行動力を知っているから、そう感じるのだ。 その行動力の結果が、森本航大であり、彼の友達だと言うのに。 その時、LINEの着信音が鳴った。僕のではないのは確かだ。遥香を見ると、自分のスマホを見ている。その顔色が一瞬で変わり、その後はまるで別人にでもなったかのように、黙り込んでしまった。 その変化に、森本航大の母親は気が付いていないのだろう。自分を慰める為に、自分の殻に閉じ籠っているように見える。そのまま自宅の玄関を開き、その時になって漸く僕達の存在を思い出したのか、「今日は本当に、ありがとうございました」と、弱々しい笑顔を残して玄関の向こうに消えていった。 僕は、その笑顔を振り払うように遥香に視線を移すと、目で問いかけた。言葉がなくても、彼女は僕の問いに気付いたようだ。スマホを取り出すと、僕にその画面を見せてくれた。
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