piece3

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道を歩いていると、左の掌に違和感を覚えた。ぐにゅり、と、内側で何かが動くような感覚。くすぐったいような、気持ちの悪いような、言葉に出来ない不可思議な感覚だ。 視線をそちらに向けると、“彼女”が僕を見ている。そして思い出す。道端で拾い上げた眼球の事を。 何故、忘れていたのだろう。 “彼女”は半分、僕の掌に癒着していて、まるで『手の目』のようだ。すると、僕の頭の中を見透かしたかのように、微かに“彼女”が笑った気がした。しかしすぐに、視線を動かす。 そうだ、“彼女”は何かを探していたんだ。その事を思い出し、視線の先に顔を向けた。 それまでずっと、舗装され、石の塀が続く道を歩いていた。しかし今はでこぼこの山道に立っていて、道の脇には草が生えている。そして視線の先には、苔生した石の地蔵があった。 その地蔵の前に何かが供えられている。よく見ようと近付くと、それは大根のように見えた。 と、左手の内側で、ぐるんと動く感覚がする。驚いて“彼女”を見ると、怒っているのか、輝く虹彩を僕に向けていた。 そこで地蔵に視線を向けて、改めて供えられている物が何かを確認した。 よく見ると、それは太腿のようだった。滑らかで、吸い付きそうな白い肌。ただ、それ以外の部分がなかった為、大根に見えたのだ。 でも“彼女”は、自分の脚を大根だと思われて怒ったのだろう。 そんな“彼女”を可愛いと思った。
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