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道を歩いていると、ピンポン玉のようなものが落ちていた。
小さなそれは、まるで僕の注意を引くかのように、光を放っている。
僕は近付くと、それが何なのかを知ろうとして、膝を付いた。
それは完全な球体ではなく、球根のように、一端から幾筋かの根のようなものを伸ばしている。その反対側には、焦げ茶色の丸い部分があり、その円の内側は瞳のように虹彩を持っていた。触れると柔らかく、暖かい。
光って見えたのは、薄く、膜のような液体で濡れているから。
それは眼球だった。
でも不思議と気持ち悪いとは感じず、それを拾い上げた。その、ねっとりと吸い付くような感触に、僕は何故か高揚していた。
それは虹彩を収縮させながら、僕を見ている。眼球だけの存在なのに生きているのだ。そして、何かを訴えかけてきていた。
何処かへ行きたいのだろうか。
自分の肉体を探したいのかも知れない。
僕はそれを手にしたまま、立ち上がると、また歩き出した。
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