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みんなと言うのは、失踪したと言っていた、他の若者達だろう。『ここ』が何処なのかについては返事がまだ返ってきていないが、それでも先日の緊急を要するようなメッセージではないのが救いだ。
遥香の表情も、ここ数日とは比べ物にならないくらい落ち着いている。
僕はと言うと、安心すると共に猜疑心も芽生えていた。航大達の悪戯ではないかという猜疑心。いや、それもあるのだが、逆にそうであって欲しいという願いもあった。悪戯なら、叱れば済むだけの話だからだ。
とにかく彼らを見付ける事が先決だ。
そんな事を考えながら、時計に視線を移す。思ったよりも長く眠っていたらしく、もうすぐ目的地に到着する時刻になっていた。
車窓を流れる景色も、僕達が住んでいる、ビルや看板ばかりのどこか無機質な色合いから、緑が主体の目に柔らかな色合いを見せている。
時間にして二時間と少し。だがそれだけの時間で、世界は一変する。遥香も楽しそうに、外の景色を眺めていた。その変化は次第にスピードを落としていき、完全に止まると、僕達は下車する為に席を立った。
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