piece3

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そこまでの道は、遠足気分で歩けるような、なだらかなものではなかった。いや、元々はそこに道らしいものは無かった筈だ。それが事件から後、何人もの人間に踏み均されて、道と呼べるまでになったのだ。 真っ直ぐに廃坑まで繋く道。鬱蒼と繁る樹木が両脇を固め、僕達が道を逸れるのを阻むかのようだ。 そこでまた、遠退いていた非現実が僕達に忍び寄ってくる。 天井を覆う、木立の隙間に覗く青空に救いを求めるも、そこからはちらちらと光の粒が落ちるだけで、僕達を覆い始めた闇を払拭するには及ばず。 朝露が足を濡らし、地面から上る湿気は、更に深い闇を僕達に纏わり付かせる。 足は次第に重くなり、廃坑までの道程は永遠に続くかと感じ始めていた。 しかし突然、それは終わりを告げた。黄色いテープを貼られた、真っ黒な洞穴の入り口が目の前に現れたのだ。その付近は踏み均され、小さな空き地のようになっている。周りに生えていた木々も、犯人の手によってか捜査の為か、数本が切り倒されていた。その為、そこだけ下草にまで暖かな光が届いている。 警察による捜査は一通り終わったのだろう。周囲に人の気配は感じられない。僕達は顔を見合わせた。お互い、逡巡しているのが分かる。 その時、何処かで鳥が飛び立った。バサバサという羽音と、枝葉が擦れる音。それが合図だったかのように、僕達は同時に足を踏み出していた。
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