piece3

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僕達が歩を進めると闇は少し晴れ、その中に在るものの輪郭を、薄く浮かび上がらせる。線路跡の凹凸や壁のランタン、壊れたトロッコ等。全ては過去の遺物、過去の亡霊が、ぼんやりとその輪郭を浮かばせている。 闇は完全に晴れた訳ではなく、その輪郭の陰に、まるで墨でも塗ったかのような黒で存在していた。そこに何かが潜んでいるような気がして、なるべくそこを踏まないように歩く。遥香も何かの存在を感じるのか、離れないように僕の服の裾を掴んできた。 次第に背後の入り口の光は小さくなり、ますます僕達を日常から断絶させていく。それは言葉を発する事すら拒むかのようで、僕達は沈黙と闇の中を進んでいった。 時間は意味を成さなくなり、空間は過去に繋がる。 闇は悪意を以て僕達を包み、歪んだ感情で満たし始める。 そんな感覚に縛られないように、僕は足を速めた。遥香の手が離れたのは感じたが、着いてきているかを確認する余裕はなかった。 早くここから解放されたい。 その思いばかりで、気が付けば走り出していた。その時、 「先生!」 悲鳴に近い遥香の声に、我に返る。慌てて振り返ると、遥香が必死で追いかけてきていた。置いていかれるかも知れないという恐怖で、その顔は白くなっている。僕は深呼吸をして息を整えると、 「悪かった」 どうにかそう、声を絞り出した。
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