piece1

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この事件の概要はこうだ。 場所は、地元の人間ですら足を踏み入れる事のなくなった、忘れ去られた廃坑。そこに続く線路は撤去されており、入り口は生い茂る繁みに半分、隠されていた。そんな場所を彼らが見付けたのは、本当に偶然だろう。彼らは地元の人間ではなく、たまたま山に入り込んだ若者達だった。 どんな目的で、そこまで入っていったのかは分からない。しかし彼らがそこに足を踏み入れて、かなり肝を冷やしただろう事は、想像に難くなかった。彼らは這々の体で近くの人家まで辿り着くと、支離滅裂な言葉を発した。そんな彼らが落ち着いて、相手に理解出来るような言葉を伝えられるようになって初めて、警察に通報が入ったのだった。 廃坑の奥は誰かが掘り広げたのか、想像以上に広くなっていた。そこに、若者たちの話以上の惨状と死が広がっていたのだ。 元は人間だった物体が解体され、まるでマネキンのように、各々の部位に分けて並べられている。赤黒い臓物も綺麗に洗われ、中央に置かれた台の上を飾るかのように広がっていた。それらを見た警察関係者らは、生命など欠片も残っていないと考えた。しかし、そんな中で小さな手が動くのが見えたのだ。 その小さな手の持ち主が、話題の少年だった。 彼は救急隊によって、即座に搬送された。しかし彼以外の生存者はなく、犯人もまた見つかっていない。勿論、犯行の動機や目的など、分かる筈もなかった。 そして世間は、こんな凶行を行う事が出来る異常者が、まだ捕まっていない事実に、恐れ慄いていた。
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