piece1

8/9

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
あの時、若者達が転がり込んだ民家は、偶然にも僕の祖母の家だった。剰え、その場に僕もいたのだ。その事は、幸いマスコミには漏れていない。しかし、警察や家族への説明をしなければならず、こうして幼馴染みの少女からも、相談を受ける羽目に陥っている。 「警察にも話したけど、誰も見てないよ」 昔は鉱山によって賑わいを見せていたあの町も、今では空き家が目立ち、人の住んでいる家屋の方が少ない程だ。昔から住んでいる住民はその地を離れず、離れたら戻らない。そして新しく人が入ってくる事はなかった。だから彼らは全員が顔見知りで、知らない人間が入り込めばすぐに知れ渡る。 警察も聞き込みを行ったが、不審な人物を見た者は誰もいなかった。犯人を早く捕まえて欲しいという、彼女の気持ちは分かる。しかし、彼女の望む答えを、僕は持っていないのだ。そこで、 「でもさ、こう言っちゃ悪いけど、その子達は、普段からそんな感じだろう? 夜中に集まってみたり、そのまま遊びに行っちゃったり」 そう、別の可能性を示唆してみた。軽薄な言葉だが、少しでも安心させようとしたつもりだった。しかし僕がそう言うと、彼女は強い瞳で僕をしっかり見据えてきた。 「それは絶対、無いです!」 何故、そんなに自信を持って言い切れるのか。疑問に思っていると、すぐに彼女の口から、その答えを聞く事が出来た。 「みんな、スマホを置いていなくなってるんです。財布とかならまだしも、スマホを持って出ないなんて、絶対にあり得ないです」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加