考古学者

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「″流怪″だと?」 顔をしかめるニコラスは、すでにスペンサーが攻撃した場所に立ってはいなかった。 彼は天井から、スペンサーの頭上目掛けて五芒星を飛び出す。左手には金色のロケット。 注視しなければならないのは反対の右手だ。青く輝く警棒を握りしめ、落下の勢いを利用して容赦なく振り下ろした。 「おっと……」 さすがに、この奇襲を読んでいたスペンサーは前へ転がり、危険地帯から難なく離脱。 警棒は床に触れると、強い煌めきをあげて炸裂。絨毯を塵に変え、小麦色のタイルを砕く。 「″解宝″を温存するつもりか?」 輝く警棒を床から離し、体勢を整えるニコラスの額には青筋が立っていた。 (……なんだありゃ? どっから出した?) 銃身に木の実を込めるスペンサーの興味は、青白い光に包まれる警棒へ。 それを握って立つニコラスの後方で、瑠璃色の電撃が炸裂。蹴りと共に見舞われた炎を払い、レイズリーが立ち上がる。 「ハァ……ハァ……」 プスプスと、全身の至るところから黒煙をあげている。服は焦げ、左の頬から顎にかけては酷い火傷を負い、艶のあった長い髪もボサボサだ。 「その警棒、まさかとは思うが……」 装填を終え、質問を投げようとした矢先に、スペンサーは自身の両足に違和感を覚える。 「ん? あれ? 熱っ!」 両足が燃えているのだ。普段は耐火熱製の衣服を身に付けているが、今は学生を装っていた為に安物のスーツ姿。 もちろん、特別な代物などではない。先程纏った炎が残ったままとなり、熱さに鈍感な彼は今まで気がつかなかった。 「くそッ……着替えてくりゃよかった」 「随分と余裕だなぁ、オイ」 まるで埃をはたくかのように、両足の炎を素手で取り払うスペンサー。 そこへ、ニコラスの持つロケットから光線が放たれた。太く強靭で、速度もかなりのもの。 「何言おうとしたか忘れちまった!」 消化を完了したスペンサーは、左へ身体を流すように走り、回避。反撃はせず、五芒星の位置を警戒。 地雷のように近くに仕掛けられていないかを確認し、待ち合い用の黒いソファーを飛び越え、硝子造りのテーブルの上に立つ。
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