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ポルターガイストの周囲を回っている無数の瓦礫が、速度を増していく。
加えて、衛星の如く規則性をもって徘徊していたそれらが、行動範囲を広げ始めた。
ポルターガイストを中心にして、徐々に速く、広く、二人の逃げ場をひとつずつ塞いでいくかのように、まるで無差別破壊を目論んでいるかに思えて、的確に標的だけを狙う。
「避け切れるかよこんなの!」
無数の瓦礫は、まずライスを左側から襲う。彼の持つ銀色の銃ならば防ぐことができるだろう。
しかし、数が多すぎた。
「くそったれ!」
出力最大の光弾を放つが、およそ数個の瓦礫を消し飛ばすのみ。″ドルオンテクノロジー″によって造り出された兵器のひとつに欠点があるとすれば、連射ができないということか。
「伏せろ!」
とっさにスペンサーは走り出していた。瞬時に瓦礫の軌道を目で追い、うつ伏せになりさえすればかなりの攻撃を凌げることを察知する。
「ッ……!」
ライスは忠告が耳に届いたと共に、頭を抱えてその場に倒れ込んだ。光弾によって瓦礫の到着が遅れたため、うつ伏せになるだけの時間はあった。
その頭上を、スペンサーが飛び越える。
「避けれねぇなら、叩き落とすまでだ!」
両手の散弾銃を持ち変え、太く強靭な銃床でライスに迫る瓦礫を叩く。
着地と同時に、全力で振り下ろした。
例え砕けはしなくとも、宣言通り叩き落すに足る威力。それが、″ただの瓦礫″だったなら。
「なん……ッ!?」
着地と同時の反撃。しかし、スペンサーの足は地につかない。
たったひとつ、握り拳程度の大きさに砕けた瓦礫。それに銃をぶつけた状態で、彼の体は後方に運ばれていく。
『叩き落とすですって、アリス』
「無理なのにね、リリス」
戦場に似つかわしくない口調での会話。まるでテレビでも見ながら喋り合っているかのよう。
「ぐ……そッ!」
すぐにスペンサーは弾き返され、遅れてやってきた瓦礫の雨をその身に受ける。
ライスもまた、いくつかの瓦礫に体を反転されられ、悶絶の表情。
「がはッ……」
仰向けになり、地面を滑るスペンサーは血にまみれていた。口から漏れる鮮血を拭う暇なく、頭部から流れる赤が顔を染めていく。
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