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凄まじい威力を誇る瓦礫は、二人に命中したものから順番に地に落ち、転がる。
その様子は半開きのスペンサーの目に、命令を全うし力尽きたかに見えた。
(″黄道十二宝″……)
激しく咳込んだ後、荒々しい呼吸を整えながら立ち上がるスペンサーは、散弾銃の持ち方を戻し、考える。
十年前、″黄道十二宝″に数えられる秘宝と戦った時の記憶だ。
『あらアリス、全然平気みたいだね』
「そうね、リリス。まだ遊べるね」
ライスは倒れたままだが、ポルターガイストはスペンサーの様子を見てクスクスと笑いをこぼした。
「チッ、ふざけやがって」
口元を拭い、引き金に指をかける。
瓦礫に弾き返されたことで、目的の倉庫から遠退いた。
が、スペンサーは感じていた。ポルターガイストは、二人がなぜここに来たのかを知らない。
シャッターを強引に引き剥がした後、七番倉庫に手を加えようとしないのが確たる証拠だ。
まだ、チャンスはある。だが、気づかれたが最後。
スペンサーの思考が全力で回転し、自らの宝具を使用できる状態にする為の、策を練る。
「次はどうするの?」
『う~んとね』
「おらぁ!」
考えがまとまる前に、スペンサーは引き金を引いた。
先程からポルターガイストと″バルゴ・ドール″の間に交わされる会話。
今までの攻撃は全て、彼女と人形のお喋りが終わった直後に放たれていた。
「これ以上は何もさせねぇ!」
ならば、会話を止めることにより攻撃を封じる。スペンサーは迷うことなくそれを実行。
計四つの銃口から放たれた散弾が、およそ視認できない速度でポルターガイストに迫る。
が、
『そういえば、まだ聞いてなかったね!』
銃声が鳴り響いたことを気にもかけず、人形と彼女のお喋りは続行されていた。
漆黒の散弾は、ポルターガイストに届くことなく空中に制止。
スペンサーとライスが驚愕の表情を見せると同時に、力なく地面に落ち、転がった。
「そうだね、ちゃんと聞かなきゃ」
そして、会話はまとまった。
どうやら、ポルターガイストから二人に向けて、初めて投げられる言葉。
「『デッドクロスを殺したのは……あなた?』」
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