絶体絶命

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世界の中央に位置しているフェニムール大陸。 そこはとある組織が支配下に置く、この世で最も広い面積を持ち、様々な国が存在する。 中でも圧倒的な軍事力を持つことで知られている国、エルカニア王国。 東に負けじと発展を遂げたこの国には、とある噂で観光客が寄り付かない。 観光を目的とする名所もなかった。三つの円状の段差となって、いくつもの町を広げる国の頂点には美しい灰色の王城が、権力を示すようにそびえ建っているが、他国の人間は近寄らない。 富裕層、平民、貧困。 この国は各段によって、住人の種類が違う。上に登るほど街並みも違う。 徹底的な格差社会。王城が建つ一番上の″裕福街″には、金など吐いて捨てる貴族と称される者達の住処。 二段目は、″平民街″。中央の段差に近いほど富裕層に近い。円状の大地の外側にはスラムが広がっており、下の段には″貧困街″と呼ばれる最下層。 段差によって決められた税を納めなければ、その人間は家族ごと下へ落とされる仕組みだ。 もちろん、住む段によって国からの扱いも違う。差別などは黙認され、圧倒的な軍事力の前には誰も逆らうことを許されない。 そんな国の二段目、大地が剥き出しにされた段差の近く。 そこはビル群だった。円状に広がる段の根元全てがそうではなく、一帯に押し留められている。 「あんたってさ、おかしな行動とる時あるよな?」 そのビルの中の一室。照明もろくに点いていない、狭い場所で一人の男がつぶやきをあげた。 正方形の部屋は決して広くない。薄汚れた絨毯が敷かれ、天井にはひとつの裸電球が点滅し、黒塗りされた木製のデスクはおよそ仕事用に造られたもので、無数の引き出しがある。 「なんでジルバ王国にいったのさ? 目撃情報まで世界に放送されてたし、テースの尻拭いは俺にさせるしよ」 そう言い放つ男はかなり早口だった。容姿もまた、長い青の髪を揺らし、両目には縦の切り傷。火傷で潰れ、赤くなった鼻と、特徴がある。 『てめぇにゃ関係のないことだ。得意の占いでどうにかしたらどうだ?』 言葉を返すのは、黒いフードを被った黒衣の男。彼はデスクの前に立ち、くぐもった声でそっけない口調で話す。 「連れねぇな、せっかく手を組んでんだから仲良くやろうぜ?」 早口でそう言った男はデスクに近づき、笑みを浮かべる。 その目に映る男には、顔がなかった。
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