考古学者

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「……ッぐぅ!」 業火の薔薇は、全てのレーザーを防ぐには至らなかった。渦を巻き、熱と爆風を前方に放射する花弁を貫き、スペンサーの身体へ直撃する。 接触時に炸裂し、強烈な衝撃波を生み出すレーザーが、彼の身体を貫通することはなかった。 それでも、ダメージはかなりのもの。天井に描かれた五芒星が消え、束縛から解放されたスペンサーは力無く床に向かって落下。 それを黙って見ているニコラスではないが、 「余計な手出しをするんじゃねぇ!」 攻撃よりも、優先したのは怒鳴り声による制止命令。 「″電流具術″」 だが指示に従おうとしないレイズリーは、両手で杖を回転させてスペンサーの落下点へと接近。 「″雷撃(インパクトボルト)″」 先端の宝石から大量の紫電を溢れさせ、着地後のスペンサーに勢いよく殴りかかった。 「ゲホッ、交互に攻撃してくんじゃねぇよ」 冷静に口元を拭い、立ち上がり様に大きく仰け反ることで横一閃に振り抜かれた杖を回避。 彼女が使用した宝具闘術は、紫電で覆った部分を何かと激突させなければ真価を発揮しないどころか、意味を成さない。 その性能を熟知しているスペンサーは、炎を使用した防御には回らず、自力でかわすことを選択。 全力で振り切られた杖が完全に目の前を通過したところで、床に照準を合わせた双方の引き金を同時に引き、自分自身を挟むように業火を発生させる。 「足手まといが!」 ニコラスからの罵声は後方から。スペンサーは気にせず、周囲に展開している五芒星の位置が変更するのを感じながら、上体を起こしてその場で跳躍。 「″炎流怪″」 自分の右隣で炸裂した炎を巻き込むように、鋭い蹴りを見舞う。 「″炎上蹴打(エンジョウシュウダ)″」 「がッ……!?」 業火を纏った跳び蹴りは、体勢を崩していたレイズリーの顔面へまともにヒット。 小柄な体躯を宙に浮かせ、仰向けに打ち倒して床を滑っていく。 それを追うように、右隣で揺らめいていた炎は足に纏ったものも含めて流れ、レイズリーを包み込む。 スペンサーの動作は、そこで止まらなかった。蹴りの勢いを利用して、そのままニコラスの方に振り返る。 当然、左隣にあった炎は途中で巻き込まれ、蹴りの風圧に扇がれて直進。敵を狙い、エントランスを流れていく。
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