考古学者

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スペンサーは必死に記憶を掘り起こし、足を覆う炎を消す前にするはずだった質問を思い出そうとしている。 不審なのは、ニコラスが握っている警棒だ。彼の知っている限りでは、金色に輝くロケット以外の武器を持ち合わせていなかった。 「くッ……よくも!」 怒りにまかせて踏み出そうとするレイズリーの行く手を阻むよう、ニコラスは手の警棒を挙げて制止。 「まだわからないか? お前じゃ相手になんねぇんだよ」 忠告は厳しいものだったが、事実だけを述べていた。相手が悪いと言えばそれまで。 トニーの相棒であるスペンサーには、彼女の″電流具術″が通用しない。 「てめぇはさっさと考古学者を追え。この場に弱者がいると目障りなんだよ」 「なんですって!」 「思い出したぞ!」 二人の会話に口を挟むと、二発の火の粉をそれぞれに向けて放つ。 ニコラスはロケットから小さな光弾を飛ばし、レイズリーは杖の先端から紫電を出して、前方から迫る火の粉を相殺。 「その警棒、″ドルオンテクノロジー″で造られたものか?」 質問を投げ、机上から飛び下りる。直後に、硝子のテーブルには五芒星が出現した。あと少し遅ければ、何らかの攻撃を受けていただろう。 「だったらなんだ?」 「-0との防衛戦線を請け負ってたお前らが、向こうの武器を持ってても不自然じゃねぇけどな。意外なのは技術を奪われたまま、取り返そうとしない東の連中だ」 探検部隊が出向いた防衛戦線での争いは、ドレスビーストがとるに足らないものだったという報告をして終わった。 しかし、ニコラスからしてみればそうではなかった。実質、-0の実験に付き合わされた容となり、それが気に食わなかった彼らは、出来るだけ敵の装備を壊さず奪うことに徹し、インフィニティの技術班へ手渡していた。 だが、入手できたものはいずれも欠陥品ばかり。 彼の持つ警棒、″ドルオン=バット″もその中の一つである。 「俺らが怖ぇのさ。科学者共に前線に立つ度胸はねぇ」 「それは同感だな」 ″ドルオンテクノロジー″を独占する一流企業の社長、サミュエル・マネージ。″自動浮遊操作システム″を開発したヘイロス・ドーフル。 -0に所属していると噂される二人の科学者に、スペンサーは襲われたことがある。 その際、決して本人は目の前に現れなかった。
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