考古学者

53/58
8087人が本棚に入れています
本棚に追加
/1396ページ
「奴らのことはどうでもいい。いずれ俺達の手によって滅びるんだからな」 ニコラスが警棒を振り上げると、再び五芒星の位置が変わる。隙をついて前に出ようとしていたレイズリーは、一歩目の場所に浮かび上がったのを見て、行動を中断。 「ま、それならそれで別にいいさ。そんなことより、教育係は大変そうだな」 「まずは黙らせてやるか」 挑発的な口調をやめないスペンサーに対し、ニコラスは警棒の先端を向けてつぶやく。 瞬間、スペンサーは感じとった。すぐに右へ飛び、警棒から放たれる青白いレーザーを回避。 「ビームも出るのかよ、その警棒」 穴から何かが射出されるなら、形状はどうあれスペンサーには感じとることができる。だがそれは、平面上に展開する五芒星を除いての話だ。 「電流具じ……ッ!?」 背後でレイズリーが動くのを察知し、前へ向けていた警棒で後ろを薙ぐ。 彼女からすれば、まさかの味方からの不意打ち。避けることはできず、額を殴られて倒れ、顔を押さえて悶絶する。 そして、フロント台に浮かび上がった五芒星から光線を放出。 その的となったスペンサーは、二丁の拳銃を回しながら前に走り、回避。 光線は反対の壁にある五芒星に吸い込まれ、天井の五芒星から吐き出される。 それはスペンサーの頭上ではなく、微動だにしないニコラスの脳天へ。 「″蒲公英(タンポポ)″」 構わず、スペンサーは右腕を突き出しながら三発の火の粉を発射。 (間に合うか!?) 心の中で、彼は焦っていた。上からの光線を、開いたロケットで受け止めるニコラスが、次に何をするか知っているから。 「フン……」 不機嫌面をそのままに、鼻を鳴らしたニコラスは同時着弾する火の粉を受け、巨大な業火の蒲公英に呑まれた。 それも一瞬、三重になった無数の花弁を消し去るのは、長身を包み込むドーム状の結界。 いくつもの五芒星が描かれたそれは、ホテルを覆うものとは違い、外からの干渉を拒絶する。 「決着をつけてやろう、もう一人の相手も俺がやらねぇと駄目だからな」 金色のロケットは、輝きを失っていた。変わりに光を放つのは、彼が首に下げた白いヘッドホン。 その両耳に当てる部分に、五芒星が出現している。ニコラスは迷うことなくロケットをしまい、ヘッドホンをかける。
/1396ページ

最初のコメントを投稿しよう!