考古学者

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銃身に弾を込めれば込めるほど、負担は大きくなっていく。 「この状態の弱点って、なんだっけな」 ″デカラビアの紋章″が持つ力を、口に出しつつ脳内で復習。 巨大な結界を展開し、その内部であれば好きな場所に五芒星を浮かび上がらせる。 五芒星の役割は大きく分けて三つ。 対象を引きずり込み、別の位置へ転送する。光線を放射し、対象を攻撃する。触れたものを拒絶し、任意の角度で弾き返す。 これら三種類の五芒星は、必ず固体の平面上に展開する。大気中や水面などに出現させることはできない。 スペンサーが知る情報は少なかった。彼は″デカラビアの紋章″が持つ力の真価を知らない。 そして、 「ボーッとしてるが、いいのか?」 今から、思い知ることになる。 「なんだよそれッ!?」 無数の光線がエントランス内を飛び交う中、ニコラスは平然と一直線に距離を詰めてきた。 身体に光線が触れようがお構い無し。否、太く強靭な光線は全て、秘宝と同化した彼の身体をすり抜けていた。 かと思えば、光線の一本に貫通されたまま立ち止まり、一瞬で姿を消す。 光に溶け込むかのように、彼は部屋中に張り巡らされた光線を、流されるかの如く高速で移動している。 縦横無尽、気配すら感じられない。試しに銃口から数枚の花弁を放つが、光線は炎をかき消して見せる。 「どこから……」 辺りを見渡し、五芒星の位置を把握。張り巡らされた光線を掻い潜り、スペンサーはフロント台の近くに移動した。 現時点で、どの五芒星からニコラスが現れても、また、光線から飛び出してきても対応できる位置。 しかし、彼は気づかない。背を預けたフロント台の上に、新たな五芒星が出現したことに。 「この姿なら、てめぇの減らず口を聞かなくて済む」 声に反応して振り返り、黄金の銃口を向ける。 だが遅い。青白く輝く警棒によって顔を弾かれ、大きくふき飛んだスペンサーは、横一閃に放出され続けている光線にぶつかり、うつ伏せとなって床をはねて行く。 「がッ……!」 鮮血を吐き散らし、歪む視界に怯むことなく仰向けに反転。ニコラスはフロント台から動いていなかった。 掌に五芒星を浮かび上がらせ、追撃の準備に入る。 その時、場に異変が起こった。成す術がないと思われた現状を、打開できる好機が訪れる。
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