考古学者

58/58

8093人が本棚に入れています
本棚に追加
/1396ページ
レイズリーが、立ち上がっていた。 瑠璃色の杖を構え、その先端に散りばめられた宝石に、右手を当てる。すると、発生した紫電が彼女を包み込み、同じ色をした網状の紋様を全身に巡らせる。 「大口叩いといて、自分も負けるなんて……惨めな男ね」 それだけ言うと、レイズリーは凄まじい速度での移動を見せる。まずはニコラスの近くに落ちている金色のロケットを拾い上げ、フロント近くで立ち止まった。 トニーと同じ、紫電による身体能力の向上。彼と違う点は通過した場所に電撃が残らないことと、彼女を取り巻く瑠璃色の煌めきが、彼に比べて少ないことだ。 「私はあなたの相棒とは違う。″フルフルの蹄″から絶え間なく紫電を身体に流すなんて真似はしない」 再びホルダーから二丁目を抜いたスペンサーへ、見下すかのように言い放つ。 「だから、″解宝″に動けなくなるなんて惨めな姿は晒さないわ。紫電の量を調節すれば、リスクを負わずに力を発揮できるのよ」 「……俺からトニーに伝えればいいのか?」 身体能力を爆発的に向上させたレイズリーを前に、スペンサーは冷静だ。 「結構よ、ここは引いてあげる。外にいる暴風女が戻って来たら厄介だからね」 「そうかよ……ちなみにお前の言う量の調節とやらは……」 スペンサーの発言を最後まで聞くことなく、レイズリーは追い付くことのできない速さで玄関を通り過ぎ、外へ向かった。 直後、アスファルトを引き剥がす轟音が響き、強い風がエントランスにも流れ込んでくる。 「結界が消えたんだけど、そっちの状況はどうなの?」 宙に浮くロベリアが、外の黒服達を片付けて戻ってきた。彼女が結界を破壊できなかった理由は、見ればわかる。 第二探検部隊に所属する、総勢二百四名との戦闘。雪が消え去った道路上には、その全員の死体が無造作に転がっていた。 「すぐに教授を追わねぇと、説明は後だ」 拳銃をホルダーに直し、呼吸を整えながら言葉を返す。 ロベリアはニコラスの死体を見つめ、床に降り立った。彼女はレイズリーが″星屑石″を拾い上げて去っていく光景を目にしていたが、無視した。 「倒したのね、やるじゃない」 「お前のおかげだ。半分くらいはな」 第二探検部隊の壊滅。勝利の余韻に浸る暇もなく、二人はエントランスを後にする。 逃げたアレンに近づく不吉な影には、まだ気づかない。 ーーーーー
/1396ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8093人が本棚に入れています
本棚に追加