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レイズリーが、立ち上がっていた。
瑠璃色の杖を構え、その先端に散りばめられた宝石に、右手を当てる。すると、発生した紫電が彼女を包み込み、同じ色をした網状の紋様を全身に巡らせる。
「大口叩いといて、自分も負けるなんて……惨めな男ね」
それだけ言うと、レイズリーは凄まじい速度での移動を見せる。まずはニコラスの近くに落ちている金色のロケットを拾い上げ、フロント近くで立ち止まった。
トニーと同じ、紫電による身体能力の向上。彼と違う点は通過した場所に電撃が残らないことと、彼女を取り巻く瑠璃色の煌めきが、彼に比べて少ないことだ。
「私はあなたの相棒とは違う。″フルフルの蹄″から絶え間なく紫電を身体に流すなんて真似はしない」
再びホルダーから二丁目を抜いたスペンサーへ、見下すかのように言い放つ。
「だから、″解宝″に動けなくなるなんて惨めな姿は晒さないわ。紫電の量を調節すれば、リスクを負わずに力を発揮できるのよ」
「……俺からトニーに伝えればいいのか?」
身体能力を爆発的に向上させたレイズリーを前に、スペンサーは冷静だ。
「結構よ、ここは引いてあげる。外にいる暴風女が戻って来たら厄介だからね」
「そうかよ……ちなみにお前の言う量の調節とやらは……」
スペンサーの発言を最後まで聞くことなく、レイズリーは追い付くことのできない速さで玄関を通り過ぎ、外へ向かった。
直後、アスファルトを引き剥がす轟音が響き、強い風がエントランスにも流れ込んでくる。
「結界が消えたんだけど、そっちの状況はどうなの?」
宙に浮くロベリアが、外の黒服達を片付けて戻ってきた。彼女が結界を破壊できなかった理由は、見ればわかる。
第二探検部隊に所属する、総勢二百四名との戦闘。雪が消え去った道路上には、その全員の死体が無造作に転がっていた。
「すぐに教授を追わねぇと、説明は後だ」
拳銃をホルダーに直し、呼吸を整えながら言葉を返す。
ロベリアはニコラスの死体を見つめ、床に降り立った。彼女はレイズリーが″星屑石″を拾い上げて去っていく光景を目にしていたが、無視した。
「倒したのね、やるじゃない」
「お前のおかげだ。半分くらいはな」
第二探検部隊の壊滅。勝利の余韻に浸る暇もなく、二人はエントランスを後にする。
逃げたアレンに近づく不吉な影には、まだ気づかない。
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