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「さぁどれ!?」
左右の腕を広げ、大きな声で尋ねるのは単身テロリストの一人、オレンジハット。
″奇術使いの手品師″と呼ばれる謎多き男を見たアレンは、座った体勢のまま硬直してしまう。
テースに集まったテロリスト達は、捕らえられたジュエリーを除いて全員が顔写真を公表されていた。
それはデァマルド大陸に留まらず、世界中に出回っている。裏事情に詳しくないアレンでも、目の前に現れた男が何者なのか、容易に理解できてしまう。
「……!?」
恐怖により、声の出し方を忘れてしまったアレンは、返答を待つ手品師の顔を見上げるのみ。
しかし、
「3の、みんな死んでいる」
「ブラボー!」
どういうわけか、アレンは流暢で尚且つ、はっきりとした声で答えを返した。
途端にオレンジハットからは、賞賛の拍手が送られる。
「さすが、世界に名高い考古学者、アレン・ギレムホールだね」
手品師の言い分に、アレンの脳内はぐちゃぐちゃだ。
質問への答えは、決して自らの意思で行ったわけではない。今もまだ、自分自身が口を動かし、言葉を放ったことが信じられない。
「テ……テロ……」
試しに喋ってみるが、安定はしない。アレンのような人間にとって、テロリストの存在は恐怖の象徴と呼べるべきもの。
逃げ場のないホテルの廊下に追い込まれている現状で、上手く話せることの方がおかしい。
「フフ、そう怖がらなくてもいいさ。今のクイズは冗談だよ。宿泊客は無事さ」
拍手をやめたオレンジハットは、嘲るような笑みを顔に貼りつけたまま、右手で帽子のつばを撫でる。
「このホテルを壊すのは簡単だけど、意味がないからね。組織は別に困らないだろうし……困るのは野球ファンくらいかな」
オレンジの帽子から手を放し、小さく一歩だけアレンに近づく。
「挨拶が遅れたね、僕はオレンジハット。誰もが認める一流の手品師さ」
アレンは必死に動揺を抑え、周りに置いた荷物を自分の方に引き寄せる。
「わざわざこんな国に来たのは、君と話をしようと思ったからなんだけどね」
目的を告げたオレンジハットの目が、自然と荷物の方へ向く。
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