8122人が本棚に入れています
本棚に追加
オレンジハットが事前に得ていた情報は、スペンサーとそれほど変わらない。
七つの塔を研究するアレン・ギレムホールには付き人がいること。その付き人が、彼を組織から遠ざけている。
こうして対峙しても、ヴィッキーの正体にはたどり着けない。だが、オレンジハットにとっては彼女のことなど、意に介す必要はなかった。
「下で戦いを繰り広げているのは二人の″エール″。彼らの指示で、君達は戦場を離脱したんじゃないの?」
どうやらオレンジハットは、スペンサーとロベリアが探検部隊と争っていた現場を見ていたらしい。
そこで、混乱と動揺、恐怖に呑まれたアレンが独りでに走り出し、逃亡するのを待っていたのだ。
が、アレンが戦線離脱を計ったのは誰かに指示されてのことではない。
戦場にいた者達の声は、どこかで見ていたオレンジハットに届いていないようだ。
「……奴らは関係ない」
「そうかなぁ? 組織を嫌う者同士で協力し合うことは賢い選択と言えるけど、組む相手は考えるべきだと思うよ?」
全てを見透かしたような態度に、ヴィッキーの眉が動く。
オレンジハットと対話をした者は皆、同じ感情を抱くことになる。彼は相手の話を聞いているようで、実際は自分の話したいことだけを述べているのだ。
「……だから、テロリストである貴様に手を貸せと?」
「″エール″に協力した時点で、テロリストに手を貸したと同意義だよ。組織を抜けた七人の中には、″猛毒と共に歩く男″がいる。彼らも僕達とあまり変わらないさ」
「そ、そうは思わない」
詰まりながらも口を挟んだアレンは立ち上がり、前に立っているヴィッキーの肩に手を置いた。
「僕は真剣に七不思議と向き合い、生きてきた。少し話した程度だけど、彼らも同じものを持っていると思う」
意思表明を告げるアレンの顔を見て、ヴィッキーは刀を構えつつ、少しだけ横に移動した。
「同じもの?」
「″ブラックオベリスク″に対しての敬意だよ」
言われたオレンジハットは、左手を口元に当てて嘲笑をこぼした。
「僕にはそれがない……そう言いたいのかい?」
再び帽子に手を当て、深く被り直す。
「だから、君に研究資料は渡せない」
アレンは身体を震わせながら、はっきりと言い放つ。
最初のコメントを投稿しよう!