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声を聞き、オレンジハットはゆっくりと振り返る。彼は気配に気づいていた。その証拠に、指を鳴らした手には白い布が出現していた。
それを握りしめ、スペンサーに見せつける。かなり大きく、オレンジハットの体躯なら三人分を覆い隠せるような代物。
「相変わらずすぐに逃げるな、てめぇはよ」
「やぁ、テース以来だね。エルカニア王国での頑張りは聞いているよ」
スペンサーの挑発的な口調には動じることなく、布をはためかせて言葉を返す。
「でも、奴隷は東に渡っていない。僕も驚いたんだけど、M・クラフトが復活したらしいね。なんでも最後は彼に奴隷を預けたんだとか……ダメだよ、そんなことしちゃあ」
「なんであんたがエルカニアの情報を知ってるわけ?」
質問を投げたロベリアは、腕を組んで両足を覆う風を止める。
「君は初めましてだね、ロベリア・フェースエール。そういえば、ちょうど会いたかったんだよ」
「質問に答えろよ。テース参加組のテロリストはタロットピエロだけだった。あれから一週間しか経ってねぇのに、てめぇに情報がいくハズない」
「フフ、そうか……知らないなら教えてあげよう。君がルックスランドで暴れ回っている時から、スタントマンと僕は手を組んでいるんだよ」
言われたスペンサーは、顔をしかめて銃を下ろした。
初めから撃つ気はなかった。オレンジハットが回避すれば、発射された火の粉は逃げ場のないアレンとヴィッキーを襲う。
「なるほどな」
「彼とはエルカニアで会ったみたいだね。別に彼も僕も、同盟を結んでいることを隠していたわけじゃない」
彼らの会話に、アレンとヴィッキーは置いてきぼりの状態。だが気にすることなく、静観を続ける。
「あんたの仲間の話はどうでもいいんだけど?」
苛立ちの込められた声がロベリアから発せられると、オレンジハットは布を握ったまま咳払いをする。
「ああ、そうそう……話がそれたね。えっと……そうだ、君達があんな奴に奴隷を預けるから、全て水の泡になったって話をしたかったんだ」
まずは最初の議題に戻り、布を持つ手でスペンサーを指差す。
「M・クラフトは奴隷を殺した。初めから協力する気など微塵もなかったみたいだね」
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