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インフィニティの目は、現在″ブラックオベリスク″しか見ていない。これは東の過激派組織が、″アバドンクレーター″しか見ていないのと同じこと。
「のんびり話してる場合じゃないだろ?」
「確かにね。いい情報交換になったと思うよ」
再び振り返り、オレンジハットは″超人″の二人に身体を向ける。
「でも、あの秘宝は渡さない。組織にも君らにも、誰にもね」
「てめぇらが先に仕掛けるんなら、まんまと利用させてもらう」
「そう簡単に事は運ばないさ。雪山での戦いで生き残るのは、僕達だけだ」
そう言うと、オレンジハットは握っていた白い布で自身を包み隠し、中で指を鳴らす。
次の瞬間には、オレンジハットの姿はどこにもなかった。白い布がゆっくりと赤い絨毯の上に落ち、完全に静止する。
「瞬間移動?」
「ああ、奴の力は何回か味わったことがある。詳細はわからねぇが、あの布を出した時点で追いかけるのは無理だ」
両手に握っていた拳銃をホルダーに納め、額を拭うスペンサー。
「無事だよな?」
彼はアレンとヴィッキーに歩み寄りながら指を差し、そう尋ねる。
「う、うん。無事さ……頭は少し混乱してるけどね」
「うし、だったら早めに移動するぞ。ヴィッキー……でいいよな? 行動を共にすることに不満あるか?」
刀を鞘に納める彼女は、スペンサーの質問に答えようとしない。だが否定もしなかった。それを彼は、イエスと捉える。
「どこに行く気?」
「秘宝の情報を整理するまで、ウデロンには近寄らない方がいい。奴らが研究資料をごり押しでとりにくるなら、ドレスビーストが来る可能性も考慮した方がいいな」
「あたしが運ぶわけ?」
「それが安全だろ。痕跡を残したくないし」
不満げな表情のロベリアは、ため息をつきながら腕組みを解く。
そこで不意に、彼女は何かを思い出したように携帯電話を取り出した。
「あ……そういえば」
「なんだよ?」
電話を手に固まるロベリアの様子に、スペンサーは嫌な予感しかしない。
「リンジーと待ち合わせてるんだけど、ちょっと問題があるかも」
「だからなんだよ?」
「彼女、多分ウデロンに向かったわ……一足先に、安全な場所を確保するとか言って」
″七国柱″、ウデロンにテロリストが攻め込むまで、残り67時間。
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