112

3/8
297人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 先ほどの控え室までやったきた。運んでくれた3組の生徒は担架のまま寝椅子(ねいす)にジョージをおろすと大講堂に戻っていく。  タツオは声を潜(ひそ)めていった。 「クニ、ちょっと決勝のカザン対策でジョージと秘密の話をしたいんだ。外で人が近づかないように見張りをしてくれないか。すまない」  クニは口をとがらせた。 「また、おれだけ外野かよ。しょうがねえな。たまにはちゃんと機密会議にも混ぜてくれよ。同じ1班なんだからな」  そういいながら、さして気にする風でもなくドアを開けて出ていった。ジョージが背中を見送っていう。 「クニはなかなかだね。あれでれっきとした優秀な副操縦者候補だし、カザンのようにおかしな自己顕示欲もない。ぼくたちの年齢で、あそこまで淡々としているのは、ひとつの美徳といってもいいかもしれない」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!