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「そうか、今ごろカザンも焦(あせ)っているだろうな。まさか『呑龍』の制御下にある相手から恐ろしい一撃をくらったんだから」
ジョージはうなずいていう。
「カザンは『呑龍』に頼り過ぎで、自信過剰だったと思う。決勝戦まで『止水(しすい)』を封印しているタツオとは対照的だ。彼の能力は疑いなく素晴らしいものだが、心理的な弱点は突きやすい敵ではある」
座学で学ぶ戦史の感想のようだった。指揮官の性格は、戦局を左右する重要なファクターだ。
ジョージが寝そべったまま、手を伸ばし握手を求めてきた。タツオがしっかりと握り締めると天才児がいった。
「これがぼくにできる最大限のプレゼントだ。すこしだけだが、カザンにハンデをつけてやれた。まあ、マイクパフォーマンスはぼくの趣味じゃなかったけどね」
タツオとジョージは短く笑った。
「どれほど友軍が有利でも、決して敵を軽んじてはいけない。カザンにもいい教訓になっただろう。だけど、これで決勝戦のカザンからは甘さが消えると思う。準決勝までのおもしろ半分の相手ではなくなる」
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