01不当な人事異動

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就職活動が長引きそうだと思った私は、先輩の誘いで繋ぎのためのアルバイトを始めた。 それがこの律進ゼミナールの講師だった。 学生時代に塾講師の経験があり、先輩の紹介ということもあって、即採用。 就職活動の傍らでやるつもりだったが、 「専任社員にならないか」 という話を頂き、快諾したのだ。 そして今の有明校に赴任して、2年。 私は校長として橘(たちばな)校へ行くことになった。 「校長だなんて、私に務まるでしょうか」 まだ入社して丸2年しか経っていないのに。 「有明校と違って規模の小さい校舎だから、難しいことはないさ。君なら大丈夫。自信持って」 竹山本部長は穏やかに微笑んだ。 「ありがとうございます」 評価してくれたことが嬉しかった。 任されることが嬉しかった。 かつて私を不必要な人材とみなした前の会社を見返せたような気がした。 正直なところ、出世なんてこれっぽっちも望んではいなかったけれど、リストラのコンプレックスを抱えていた私は、救われた気持ちになった。
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