05恋愛市場価値

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「どうしてわざわざ二人で住んでるなんて言ったのよ! 私まで巻き込んで!」 帰宅後、予定通り、一方的に怒りをぶつけた。 光浦はいつかのように両手で耳を塞ぎ、クールに一言。 「そうしておいた方が都合がいいと思ったので」 「どう都合がいいっていうの?」 私はスーツも脱がぬままどかりとソファーに腰を下ろす。 私と光浦の帰宅を感知した空気清浄機が軽く音を立てて作動し始めた。 光浦はスマートにスーツのジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩め、しゅるりと抜く。 くそ、その動作、カッコいいな。 わざとやってんのか? 「ひとつ、私たちには同居人がいると認識しているので、彼らが“近いから講習の間泊めてくれ”などと申し出る可能性がなくなりました」 「……それから?」 「ふたつ、無闇に嘘をつくもんじゃありません」 光浦は、ルームシェアをしている。 私は、男と一緒に住んでいる。 「確かに……嘘はついてないけどさ」 多少の誤解はあれど、私たちが一緒に住んでいると公表していないだけで、事実でないことは何一つ口に出していない。 だからボロは出なかった。
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