止まらない想い

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「……松本さんって、私のこと全部お見通しって感じですね」 「はあ? 自惚れるな、ボケ。……あれだけボーッと会議出てたら、俺じゃなくてもわかるだろうが」 ちょっとおどけてみせた言葉に、松本さんは不機嫌そうに顔をしかめた。 「……鳴海と、うちの家族に報告に行ったんですよ」 肩を竦めて素直にそう呟くと、ほお、と松本さんは目を細めた。 「じゃ、離婚騒動にまつわる厄介事は全部片付いたってことか」 「さすが、経験者は話が早いですね」 「言ってろ。……で、晴々した顔するならともかく、なんでそんな魂抜かれたような顔してるんだ」 溜め息混じりにそう聞かれて、私はグッと言葉に詰まった。 「それなら保科と金井の関係なんか気にする必要ないだろ。 お前と保科はもう赤の他人だ。……さっさと俺のとこ来たらどうだ」 「……っ!」 俯いた視線の先に、松本さんの靴の爪先が入って来る。 腕に伸びる手を感じて一瞬身体を竦めた時。 「一ノ瀬さんっ! ……って、あれ? 松本さん?」 会議室のドアが遠慮なく開いて、トーンの高い声が響いた。 それより一瞬早く、松本さんは手を引っ込める。 「相変わらず元気だな、一ノ瀬さんの犬は」 半分苦笑で誤魔化しながら、松本さんはテーブルの上の資料を手にすると、何事もなかったように私から離れて行く。
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