止まらない想い

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「犬って。失礼だな。……僕だって、いつまでも後を追い掛けるだけの男じゃないんですよ」 会議室に飛び込んで来た颯汰君は、松本さんの言葉にムッとしたように頬を膨らませた。 その言葉を聞いて、松本さんはクッと肩を揺らした。 「二年上の先輩に並んで歩くくらいには成長したか? お前のとこの銀座支社の案件、稟議通らなくてポシャったじゃないか」 「っ……。それは確かに僕の力も足りなかったかもしれないけど。巻き返しますんで、そん時はよろしくお願いしますよ」 「ふん」 強気に負けずに言い返す颯汰君に、松本さんはふんと鼻を鳴らすと、私達に背を向けてドアに向かった。 「それじゃ、一ノ瀬さん。……例の件、検討よろしく」 振り向きざまに言われた言葉に、思わずドキッとした。 颯汰君の手前そんな態度を表す訳にもいかず、私は黙って俯いた。 松本さんの姿を見送って、私はほんの少し息を吐いた。 そして、戸惑いながら颯汰君を見上げる。 「……あの。何か用だった?」 ホテルでの一件から、颯汰君を避け続けたままだった。 こんな風に二人になるの、久しぶりかもしれない。 颯汰君も私が避けてるのを感じてたのか、一定の距離以上近付こうとはしてこなかった。 そんな颯汰君がこうして私のところに来るなんて、業務上の理由以外に考えられない。 だからそう訊ねて、ぎこちなく笑って見せた。
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