止まらない想い

6/21

5539人が本棚に入れています
本棚に追加
/326ページ
颯汰君は早口でそう言うと、私の身体に腕を回した。 私はファイルを胸に抱えたまま、その力に抵抗出来ない。 近付いて来る唇から顔を背けて抵抗すると、首筋に颯汰君の唇を感じた。 そして、軽く吸われる感覚。 「だ、ダメっ……!」 私は必死に身体を捩って抵抗すると、颯汰君は私から唇を離した。 「ここじゃダメ? じゃあ、場所変えますか?って言うか、場所が変わっても、遠慮するつもりないですよ。 ……なんか僕も、余裕なくて焦り始めてるし」 「ひゃっ……!」 言葉の通り、再度強い力に抱き寄せられる。 驚いて抗えなかったさっきとは違う。 その腕の力に、抵抗する術を失くした。 「放してっ……!」 「嫌です。……余裕ないって言ってるじゃないですか」 耳元で囁かれて、一瞬ゾクッと背中が震えた。 「僕はどうしたら……。一ノ瀬さんの心を手に入れられるんだろう」 低められた声は聞き慣れたものじゃない。 それに本能的な恐怖を感じた途端、グルッ身体の軸が回転したのがわかった。 「……っ!」 いきなり明るい電灯が目に映って、私はグッと目を閉じる。 そして恐る恐る目を開けると、私を見下ろす颯汰君で、直接の明りは遮られていた。
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5539人が本棚に入れています
本棚に追加